山城にかかる月は、迷った心にも満ちていく ― 吉田酒造の日本酒「月山 純米大吟醸」と水森かおり「島根恋旅」|味わい・合うおつまみ

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今日のペアリング

  • 日本酒:月山(がっさん) 純米大吟醸/使用米は山田錦100%・精米歩合45%・アルコール度数16度/吉田酒造株式会社(島根県安来市広瀬町広瀬1216)
    公式サイト:https://e-gassan.co.jp/
  • 歌謡曲:「島根恋旅」水森かおり(2014年)
    YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=cw9YcKsDi0s

酒蔵の話

島根県の月山 純米大吟醸

吉田酒造株式会社は、寛保3年(1743年)に広瀬藩の藩公特許を得て酒造りを始めた蔵です。蔵元公式サイトによれば、それ以前の旧家はすでに享保15年(1730年)から酒造りを営んでいたと伝わり、合わせると約300年、この安来の地に根を張ってきました。江戸時代には、その年いちばんの仕上がりとなった酒を「月山」と名付け、「一番樽」として広瀬藩主に献上していたといいます。代表銘柄「月山」は、まさにこの献上酒の名に由来しており、「殿様に献上していたような最高の酒を、常に造りつづける」という理念が今も引き継がれています。

仕込み水には、蔵の足元を流れる地元の水を使っており、公式サイトは「硬度0.3の超軟水」と紹介しています。今回合わせる「月山 純米大吟醸」は、この超軟水と山田錦100%の米を使い、精米歩合45%まで磨いて醸した一本。アルコール度数16度で、しっかりとした旨味と甘みを、やさしい酸味が包み込む、バランスの良いすっきりとした飲み口に仕上がっています。

土地の話

吉田酒造が蔵を構える安来市広瀬町は、戦国時代に山陰・山陽の太守として栄えた尼子氏の本拠・月山富田城の城下町です。月山富田城は標高約184メートルの月山に築かれた山城で、断崖と深い堀に守られた「難攻不落の要塞」として知られ、1934年に国の史跡に、2006年には「日本100名城」(65番)に選ばれています。永禄9年(1566年)、毛利氏の長期包囲によって兵糧が尽き、時の城主・尼子義久は開城を余儀なくされました。この城の麓で生まれ育った武将・山中幸盛(鹿介)は、尼子十勇士の一人として名高く、城跡の太鼓壇には今もその銅像が建てられています。

蔵の銘「月山」は、この山城の名そのものです。藩主に捧げる一番の酒に、城を戴く山の名をつけた蔵元の心意気が、400年近い時を経た今も、ラベルに刻まれています。

音楽の話

「島根恋旅」は2014年4月9日発売、水森かおりの22作目のシングルです。作詞は仁井谷俊也、作曲は弦哲也、編曲は伊戸のりお。オリコン週間シングルチャートで初登場4位を記録し、日本レコード協会のゴールドディスクに認定されました。同年12月20日には第47回日本有線大賞の大賞を受賞しています。恋に破れた女性が、山陰本線の車窓や宍道湖の景色を眺めながら、ひとり島根を旅する心情を描いた旅情演歌です。

水森かおりは1973年、東京都生まれ。1995年、シングル「おしろい花」で歌手デビューしました。2003年の「鳥取砂丘」の大ヒット以降、各地の自治体などから「ご当地を歌ってほしい」という依頼が相次ぐようになり、「ご当地ソングの女王」と呼ばれています。「島根恋旅」もその歌謡紀行シリーズの一曲です。

なぜこの組み合わせなのか

「月山」は、派手な宣伝のためではなく、ただ殿様に恥じない一本を造り続けるという、静かな誠実さの積み重ねの上に磨かれてきた酒です。一方「島根恋旅」の主人公は、傷心を抱えながら、誰に見せるためでもなく、ひとりで島根の景色を見つめて歩いていきます。

どちらも、派手な物語ではありません。けれど、難攻不落と謳われた山城の名を戴く酒が、代々静かに磨かれ続けてきたように、心に傷を負った旅人もまた、この土地の景色の中でゆっくりと自分を立て直していく。山城にかかる月は、殿様のためだけでなく、いまこの土地を歩くひとりの旅人の心も、同じように静かに満たしてくれるはずです。

この一本を、探すなら

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🌡️ おすすめの飲み方:よく冷やして。山田錦を45%まで磨いた、しっかりとした旨味と甘みをやさしい酸味が包み込むバランスの良い飲み口は、冷やすことでいちばんきれいに引き立ちます。

合わせたい「アテ」

島根県の月山 純米大吟醸

科学的にひとこと:しじみに含まれるコハク酸やグルタミン酸系の旨味、そばつゆのかえしに使われる鰹節・昆布のイノシン酸・グルタミン酸は、いずれも日本酒のアミノ酸系の旨味と重なり合い、口の中で旨味の相乗効果を生み出します。硬度の低い超軟水で仕込んだ酒はミネラル由来の味がおだやかなため、だしの繊細な香りや旨味を邪魔しにくいのも、この土地の水と料理が寄り添いやすい理由のひとつです。

この蔵をたずねるなら

吉田酒造
島根県安来市広瀬町広瀬1216/JR山陰本線・安来駅から車で約15分。
戦国時代、尼子氏の本拠だった月山富田城の城下町に蔵を構えています。

近くの観光スポット

  • 月山富田城跡/安来市広瀬町|吉田酒造から車で約5分・約1.5km
    尼子氏が本拠とした、難攻不落と謳われた山城の跡。国指定史跡であり、2006年に「日本100名城」(65番)に選ばれています。麓の安来市立歴史資料館(入館料210円)で城の歴史やジオラマを見てから登るのがおすすめです。
  • 足立美術館/安来市古川町320|吉田酒造から車で約10分・約2.6km
    米国の日本庭園専門誌『Sukiya Living Magazine』の日本庭園ランキングで23年連続日本一に選ばれている庭園で知られる美術館(2025年発表時点、美術館公式発表)。横山大観の作品コレクションでも有名です。開館時間・休館日は時期により変わるため、訪問前に公式サイトでご確認ください。

近くの温泉

  • 夢ランドしらさぎ(さぎの湯温泉)/安来市古川町|吉田酒造から車で約10分・約2.6km
    足立美術館のすぐ近く、鷺の湯温泉街にある日帰り入浴施設。水着で入るバーデスパやレストランを備え、営業時間は10:00〜21:00です。営業時間・定休日は変わることがあるため、訪問前にご確認ください。

※営業時間・定休日・日帰り入浴の可否は変わることがあります。おでかけ前に各施設の公式情報をご確認ください。

ひとことメモ(日本酒の用語)

  • 純米大吟醸酒:精米歩合50%以下まで磨いた米で醸す、香り高く上品な純米酒の最高峰にあたるランクです。
  • 精米歩合:玄米を削り、残った部分の割合。数値が低いほど、米を多く磨いていることを示します。

参考

内容に誤りがございましたら、お手数ですが info@soundrecords.jp までご連絡いただけますと幸いです。


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