きらめく東京の向こうに、三百年変わらぬ水音があった ― 小澤酒造の日本酒「澤乃井 純米吟醸 蒼天」と島倉千代子「東京だョおっ母さん」|味わい・合うおつまみ

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今日のペアリング

酒蔵の話

東京都の澤乃井 純米吟醸 蒼天

小澤酒造株式会社の創業は元禄15年(1702年)。当時の古文書にすでに酒造りの記録が残っていたことから、この年が創業年とされています。蔵がある青梅市沢井の旧地名は「澤井村」で、代表銘柄「澤乃井」の名もここに由来します。現在の当主は23代目にあたる小澤幹夫氏。杜氏はかつて越後から迎えていましたが、昭和59年(1984年)から社員杜氏の育成に取り組み、平成12年(2000年)にその世代交代を終えています。

仕込み水には、敷地内の洞窟から湧く中硬水と、山奥の井戸から汲む軟水の2種類を使い分けています。一部の商品では、蔵の中で乳酸菌を自然に取り込んで酒母を育てる「生酛造り」や、昔ながらの木桶仕込みも行っています。今回合わせる「純米吟醸 蒼天」は、精米歩合55%、アルコール度数15度、日本酒度+1、酸度1.7。蔵元自身が「品の良い味と香りが特徴。米の旨味を引き出した純米吟醸酒」と紹介する、爽やかで旨味のあるタイプの一本です。

土地の話

青梅市沢井は、多摩川の上流部にあたる御岳渓谷の谷あいに位置します。小澤酒造の蔵の前を流れるこの清流は、昭和42年(1967年)に開かれた「清流ガーデン澤乃井園」の名の由来にもなっており、今もせせらぎを聞きながら利き酒ができる行楽地として、多くの人が訪れます。

この多摩川の水は、江戸時代の承応2〜3年(1653〜1654年)、玉川兄弟と呼ばれる庄右衛門・清右衛門によって、下流の羽村から四谷大木戸まで約43kmの水路で引かれ、「玉川上水」として急増する江戸の人口を支える飲み水になりました(東京都水道局の記録による)。沢井で日本酒を育む多摩川の水は、かつて江戸、つまり今の東京の暮らしそのものを支えていた水でもあります。

音楽の話

「東京だョおっ母さん」は1957年3月10日、日本コロムビアから発売された島倉千代子のシングルです。作詞は野村俊夫、作曲は船村徹。田舎から出てきた母を、二重橋、九段坂、靖国神社、浅草とめぐり歩いて案内する娘の心情を歌った一曲で、通算150万枚を売り上げる大ヒットとなり、島倉の代表曲の一つに数えられています。同年には同名の映画も公開され、島倉自身が主演しました。

島倉千代子は昭和13年(1938年)3月30日、東京都品川区北品川の生まれ。昭和30年(1955年)、16歳で「この世の花」でデビューし、いきなりの大ヒットでスターの座を手にしました。デビュー翌年に発売された「東京だョおっ母さん」は、彼女自身が東京生まれだからこそ説得力を持つ、ふるさと・東京への思いが滲む一曲でもあります。

なぜこの組み合わせなのか

「東京だョおっ母さん」が案内する二重橋や九段坂、浅草は、いわば東京の”表の顔”です。けれど同じ東京都の中には、三百年以上同じ水が流れ続ける御岳渓谷の谷あいもあります。小澤酒造が沢井で酒を仕込み続けてきたのと同じ多摩川の水は、かつて江戸の人々の飲み水そのものでもありました。

母を連れて都心を歩き回る娘の姿と、変わらぬ水のそばで酒を造り続けてきた蔵の姿。どちらも「東京」という同じ土地の、違う時間の流れ方を映しています。きらめく街を歌う曲の傍らに、三百年変わらない水音の酒を置いてみると、東京という街の奥行きが少し違って見えてくるかもしれません。

この一本を、探すなら

※楽天市場へのリンクは広告(アフィリエイト)です。在庫・取扱いは変動します。お近くの酒販店でも、ぜひ銘柄名を伝えて探してみてください。

🌡️ おすすめの飲み方:やや冷やして(10〜15℃程度)。「蒼天」の名の通り、澄んだ空のような爽やかな吟醸香がいちばん映える温度帯です。

合わせたい「アテ」

澤乃井 純米吟醸 蒼天に合わせた料理

  • 自家製とうふの湯豆腐
    小澤酒造は日本酒と同じ仕込み水を使い、直営の「ままごと屋」「豆らく」でとうふ・ゆばも手づくりしています。大豆の甘みを生かしたなめらかなとうふを、だし一つでいただく湯豆腐に仕立てれば、純米吟醸「蒼天」のなめらかな口当たりとまっすぐ響き合います。
    レシピはこちら:クラシル「ほっこり お鍋で作れる絹ごし湯豆腐」(ままごと屋の自家製とうふでも同じ作り方で楽しめます)
  • やまめ・イワナの塩焼き
    多摩川の上流にあたる奥多摩は、きれいな水で育つやまめ・イワナの名産地でもあります。塩だけで焼き上げたシンプルな川魚の身の甘みに、「蒼天」の爽やかな果実香が寄り添います。
    レシピはこちら:楽天レシピ「シンプル簡単♪川魚(にじます)の塩焼き」(やまめ・イワナでも同じ作り方でできます)

科学的にひとこと:とうふの大豆たんぱくが持つやさしい甘みと、川魚の白身に含まれるグルタミン酸・イノシン酸系の旨味は、ともに日本酒のアミノ酸系の旨味と重なり合い、口の中で旨味の相乗効果を生みます。純米吟醸酒特有の吟醸香(カプロン酸エチルなど)は低温発酵で生まれる華やかな香気成分で、素材そのものの風味を邪魔せず、むしろ輪郭を際立たせてくれます。

この蔵をたずねるなら

小澤酒造株式会社(澤乃井)
東京都青梅市沢井2-770/JR青梅線 沢井駅から徒歩約3〜5分。
蔵の目の前を多摩川が流れる御岳渓谷沿いにあり、隣接する「清流ガーデン澤乃井園」(昭和42年=1967年開設)では、川のせせらぎを聞きながら利き酒ができます。

近くの観光スポット

  • 寒山寺/青梅市柚木町|小澤酒造から徒歩約5分
    昭和5年(1930年)、書家・田口米舫が中国・蘇州の寒山寺から託された釈迦如来像を本尊に、小澤酒造の小澤太平の協力で建立された小さなお寺。拝観無料・参拝時間の制限なし。多摩川を見下ろす御岳渓谷遊歩道沿いにあります。
  • 玉堂美術館/青梅市御岳|小澤酒造から徒歩約25分・約1km
    日本画の巨匠・川合玉堂の作品を収蔵する美術館(昭和36年=1961年開館)。開館10:00〜17:00(12〜2月は16:30まで)、月曜休館(祝日の場合は翌日休)、年末年始休館。入館料は大人600円。

近くの温泉

  • 奥多摩温泉 もえぎの湯/奥多摩町|小澤酒造から車で約15分・約8km
    多摩川沿いの日帰り温泉施設。営業時間10:00〜20:00(12〜3月は19:00まで)、月曜定休(祝日の場合は翌日休)。登山や酒蔵見学の帰りに立ち寄れます。

※営業時間・定休日・日帰り入浴の可否は変わることがあります。おでかけ前に各施設の公式情報をご確認ください。

ひとことメモ(日本酒の用語)

  • 純米吟醸酒:精米歩合60%以下まで磨いた米を低温でじっくり発酵させた純米酒。華やかな香りが特徴です。
  • 精米歩合:玄米を削り、残った部分の割合。数値が低いほど、米を多く磨いていることを示します。

参考

内容に誤りがございましたら、お手数ですが info@soundrecords.jp までご連絡いただけますと幸いです。


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