二歩下がっても、三歩進む ― みなみ阿蘇ビールのクラフトビール「阿蘇レッドIPA」と水前寺清子「三百六十五歩のマーチ」|味わい・合う料理

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今日のペアリング

  • クラフトビール:みなみ阿蘇ビール 阿蘇レッドIPA/インディア・ペールエール・アルコール5%・IBU30・麦芽に赤米とホップ、乾燥ビーツを加えて仕込み・仕込み水は産山村の名水「池山水源」の水/みなみ阿蘇ビール株式会社(熊本県阿蘇郡南阿蘇村久石)
    公式サイト:https://minamiaso-beer.com/
  • 音楽:「三百六十五歩のマーチ」水前寺清子(1968年)
    YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=hEXAdhFPp7M

醸造所の話

熊本県のみなみ阿蘇ビール 阿蘇レッドIPA

みなみ阿蘇ビール株式会社の設立は2021年。コロナ禍の厳しい中で立ち上げられた、まだ5年に満たない会社です。拠点を構えるのは、世界最大級のカルデラを持つ阿蘇山の南側、南阿蘇村。名水百選の白川水源をはじめとした湧水や、地元の大麦・ホップといった地域資源を生かしたクラフトビールの企画・販売を営んでいます。公式サイトには「世界農業遺産」に認定された阿蘇の農業を基軸に、循環型農業や農福連携にも取り組み、熊本地震復興の一助となることを目指す、と記されています。

ラインナップの柱は「阿蘇ブロンドエール」と「阿蘇レッドIPA」の2本。2022年4月にブランド名「みなみ阿蘇ビール」の結合商標を、同年12月にはこの2つの商品名の商標を取得し、県内のスーパーでも贈答用を含め扱われるようになりました。直売所は、南阿蘇村久石にある道の駅「あそ望の郷くぎの」の一角です。

今回選んだ「阿蘇レッドIPA」は、麦芽に赤米とホップ、乾燥ビーツを加えて仕込むインディア・ペールエール。仕込み水には、お隣の産山村にある名水百選「池山水源」の水を使います。アルコール度数5%、IBU30。公式サイトはこの一本を「野焼きの炎が駆け上る阿蘇五岳と、阿蘇神社の火振り神事をイメージした」一杯と紹介しています。

土地の話

阿蘇山は、南北25km・東西18kmにおよぶ世界有数のカルデラを抱く活火山です。南阿蘇村はそのカルデラの南側に位置し、村内だけで湧水地が11カ所を数えます。中でも白川水源は、毎分60トンの水が湧き出す「名水百選」の一つ。直売所のある道の駅あそ望の郷くぎのから車で約11分、そう遠くない場所に湧いています。

毎年春、牧草地の再生のために野山に火を入れる「野焼き」は、阿蘇の草原を守り続けてきた営みです。炎が山肌を駆け上る夜の景色は、地元の人にとって見慣れた春の合図。そしてその近くにある阿蘇神社では、2000年以上続く農耕祭事「田作祭」の中日に「火振り神事」が行われます。氏子たちが火のついたカヤの束を振り回して、境内に迎え入れる妃神を出迎える神事で、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。阿蘇レッドIPAのラベルが思い描いているのは、この二つの「火」の景色です。

音楽の話

水前寺清子、本名・林田民子は1945年10月9日、熊本市中央区の子飼商店街に生まれました。芸名の「水前寺」は故郷にある名勝・水前寺成趣園から、「清子」は熊本ゆかりの戦国武将・加藤清正からそれぞれ取ったものだといいます。1964年にデビューし、持ち前の小柄な体でマーチングバンドの指揮者のように振る舞うステージが評判になっていきました。

「三百六十五歩のマーチ」は1968年11月10日、日本クラウンから発売されました。作詞は星野哲郎、作曲は米山正夫、編曲は小杉仁三。「しあわせは歩いてこない だから歩いてゆくんだね」と歌い出し、「三歩進んで二歩さがる」のフレーズで知られるこの曲は、100万枚を超えるヒットとなります。1969年の第11回日本レコード大賞では大衆賞を、第2回日本作詩大賞でも大衆賞を受賞。同年の第41回選抜高等学校野球大会では、入場行進曲にも採用されました。

なぜこの組み合わせなのか

水前寺清子という名前は、生まれた土地の名所と、その土地にゆかりのある武将からもらわれたものでした。阿蘇レッドIPAもまた、阿蘇五岳の野焼きと阿蘇神社の神事という、土地の景色と祭りからそのまま名前とイメージをもらっています。どちらも、自分自身の外側にある場所の力を借りて、自分の姿を定めてきました。

「三歩進んで二歩さがる」という有名な一節は、思うように前に進めない日があっても、それでも前を向こうという歌です。コロナ禍のただ中に立ち上げられ、熊本地震からの復興の一助を掲げて歩き出したこの醸造所の姿勢と、重なるところがあります。そして赤米とビーツで色づく「レッド」の名、野焼きの炎、火振り神事の松明。どれも赤くて、力強く動いている。マーチのように前に進み続けるリズムと、IPAらしいはっきりした苦みの後押しが、よく似合います。

この一杯を、探すなら

※楽天市場へのリンクは広告(アフィリエイト)です。醸造所がタップルームや直営店を持っている場合は、できたてを現地で味わうのが一番のおすすめです。

🌡️ おすすめの飲み方(温度とグラス):8〜10℃、キンキンに冷やしすぎないのがコツです。冷やしすぎるとホップの香りが閉じてしまいます。グラスは口がすぼまったチューリップ型やIPA専用グラスで。香りがグラスの中にとどまり、鼻先に集まってきます。

合わせたい「アテ」
みなみ阿蘇ビール 阿蘇レッドIPAに合わせた料理

  • 馬刺し
    熊本といえばの一皿。脂の乗った赤身を、しょうゆにおろし生姜・にんにくを合わせたタレで食べると、IPAのはっきりした苦みと香りが脂をすっと切ってくれます。
    レシピはこちら:クラシル「おうちでつくる 馬刺しのタレ」
  • からし蓮根
    白味噌と和がらしを詰めたレンコンを衣で揚げた、熊本の郷土料理。揚げ物の油と、鼻に抜けるからしの刺激の両方に、ホップの苦みと柑橘のような香りが寄り添います。
    レシピはこちら:クックパッド「からし蓮根」

科学的にひとこと:ホップの苦み成分イソα酸と炭酸のガス圧は、揚げ物や脂の多い料理が口に残す膜を洗い流し、味覚をリセットします。さらに、からしのツンとした刺激とホップ由来の柑橘・松のような香りは、どちらも鼻の奥に抜けていく感覚として働くため、互いを邪魔せず重なり合います。

この醸造所をたずねるなら

みなみ阿蘇ビール
熊本県阿蘇郡南阿蘇村大字久石2807、道の駅「あそ望の郷くぎの」の敷地内(商工ブースB室)にある直売所で購入できます。
道の駅には阿蘇五岳を一望できる70mのウッドデッキがあり、ビールのラベルが描く景色をその場で確かめられます。

近くの観光スポット

  • 白川水源/南阿蘇村白川|醸造所から車で約11分・約6.8km
    阿蘇の伏流水が毎分60トン湧き出す、名水百選の一つ。「阿蘇ブロンドエール」の仕込み水と同じ水系で、隣には水神を祀る白川吉見神社があります。

近くの温泉

  • 地獄温泉 青風荘/南阿蘇村河陽|醸造所から車で約15分・約6km
    阿蘇くまもと空港からの道順が、道の駅のある久木野交差点をそのまま抜けた先にある日帰り温泉。足元から源泉が湧き出す「すずめの湯」が名物で、日帰り湯治(10:00〜17:00、火曜定休)ができます。

※営業時間・定休日・日帰り入浴の可否は変わることがあります。おでかけ前に各施設の公式情報をご確認ください。

ひとことメモ(ビールの用語)

  • クラフトビール:小規模な醸造所が、造り手の個性を前面に出して仕込むビールの総称。大量生産の均一な味とは別の方向を目指しています。
  • IPA:インディア・ペールエールの略。ホップを大量に使い、強い苦みと華やかな柑橘や松のような香りを持たせたペールエールです。
  • ホップ:ビールに苦みと香りを与えるつる性植物の毬花(まりばな)。品種によって、柑橘・トロピカルフルーツ・草原のように香りが変わります。
  • モルト:発芽させた大麦(麦芽)のこと。ビールの甘み・色・コクの土台になり、焙煎の深さで色と香ばしさが決まります。
  • IBU:苦みの強さを表す国際的な数値。10前後だとほとんど苦みを感じず、60を超えるとはっきり苦いIPAの領域です。

参考

内容に誤りがございましたら、お手数ですが info@soundrecords.jp までご連絡いただけますと幸いです。


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